【感想】KATSU!ってどんな漫画?

デン爺

今回は、あだち充原作の「KATSU!」について紹介したいと思います。

あだち充は、言わずとしれた高校野球漫画の巨匠とも言える存在ですが、実はこの作品は、高校野球をテーマにした作品ではなく、ボクシングが題材となっています。

あだち充の作品で、高校野球以外をテーマにした作品は、最近の作品としては珍しいので(デビュー当初はいくつか描いてますが…)、一風変わった雰囲気が味わえる作品となっています。

まだ読んだことのない人のために、できるだけネタバレは避けて、実際に読んでみた感想や、この作品のおすすめポイントについて紹介していきたいと思います。

概要

基本情報

「KATSU!」は週刊少年サンデーで、2001年第36・37合併号から2005年6号まで連載された、あだち充原作のボクシング漫画です。

あだち充の作品として、ボクシングが登場する作品としては、「タッチ」であったり、「スローステップ」であったりといくつか存在しますが、中心的な題材としてボクシングを描いた作品は、この一つだけです。

全16巻が発売され、話数は157話です。

単行本は青と赤が特徴的で、主人公である里山活樹が表紙のときは赤を基調とし、ヒロインの水谷香月が登場するときは青が貴重としたデザインとなっています。

あらすじ

彼女とお近づきになりたい。

光葉高校に入学した里山活樹は、同じクラスの水谷香月に近づくために、友人の川上京太郎と共に、香月の父親が運営するボクシングジム水谷に入会した。

しかし、香月は元ボクサーの父親と、男子と戦いたいのに制度上戦えないボクシングが大嫌いであった。

それを知った活樹は退会しようと、ボクシングジムへと向かう。

しかし、そこでどういうわけか水谷香月とスパーリングをする展開となってしまう。

さらに、活樹にはとんでもないボクシングの才能が秘められていた。

そして、それを目の当たりにした水谷香月は活樹に自分の夢を託すことにする。

そして、活樹の父親で元プロボクサーの里山八五郎をコーチに迎え、大誤算の中で幕を開けた二人の「かつき」の青春ボクシングラブストーリーが動き出す。

主な登場人物

里山活樹

この作品の主人公。香月と仲良くなりたいという不順な理由で、香月の父親が経営するボクシングジムへと入会を果たす。

しかし、香月がボクシング嫌いであるということが判明したため、すぐに辞めようとする。

このように、はじめは全くと言ってよいほどボクシングに興味がなかった活樹だが、活樹の父親が負けなしであった元プロボクサーであったということもあり、ボクシングに関わっていくうちに次第に受け継がれった才能を発揮していく。

また、これは話が進むに連れて明らかとなっていくことだが、活樹のボクシングスタイルは育ての親の八五郎のアウトボクシングのスタイルではなく、本当の父親である赤松隆介のファイター型といった正反対のスタイルを得意としている。

水谷香月

この作品のヒロイン。活樹とクラスメートで名前も同じということで、以前から活樹のことが気になっていた。

強気で、父親が元プロボクサーということもありボクシングがものすごく強い。

しかし、一緒に暮らしている母親がボクシングが嫌いと言うことや、男子と試合ができないことに不満を持っていることから、ボクシングを嫌っている。

そんな香月だが、ボクシングでの自分の限界を知り、完全に諦めるために、高校生最強クラスまで登りつめた、幼馴染の紀本高道と本気の試合をすることを決意する。

そして、試合に向けた特訓として活樹の父親である八五郎に特訓を申し出る。

そんな香月だったが、八五郎のもと一緒にトレーニングをしていた、活樹の才能に気づき、紀本との試合を前に、活樹に自分の夢を託し活樹の応援と支援に全力を尽くすようになる。

紀本高道

当初は活樹のライバルとして登場する。

幼い頃、いじめられっ子でいつも香月に助けれていた。

しかし、中学に入り香月よりも強くなるためにボクシングをはじめ、高校生での全国クラスまで登りつめる。

そんな彼っだったが、好意を抱いていた香月に、持ち前の才能とセンスで日に日にボクシングが上達する活樹に恋敵として、次第にライバル心を抱くようになる。

そんな中行われた活樹との練習試合で、紀本は香月とのデートのためにハンデを抱えていたが活樹に負けてしまう。

それからしばらくして、岬という好敵手と出会うも自身の視力の低下などから、自分を倒した活樹に打倒岬という夢を託し、自身のボクシングを引退し、活樹の参謀役を買って出て、香月とともに活樹に尽力する。

里山八五郎

活樹の育ての親であり、ラビット坂口(坂口は旧姓)として22戦12勝10引き分け(1KO)負けなしの元プロボクサーである。

逃げ回っているとまで言われたアウトボクシングのスタイルを得意とし、パンチを貰わない、かわす技術は天才的なものであり、それは活樹や香月のボクシングに受け継がれ、大いに貢献している。

引退試合として望んだ試合の相手が赤松隆介戦であり、将来を有望された赤松であったが、八五郎の見事なカウンターが決まりKO勝ちを収める。

しかし、その影響であるかは定かではないが、赤松が試合から1ヶ月を過ぎて亡くなってしまう。

そのことに責任を感じた八五郎は、罪悪感を抱え、罪滅ぼしの意味も込めて赤松の婚約者であり、当時お腹に子供を抱えていた里山佐知子と結婚をし、活樹を育てることとなる。

活樹がボクシングを始めると、その才能に気づいた光葉高校の校長にボクシング部を活性化させるために、八五郎は顧問を依頼され、勤めていた会社が倒産したこともあり、依頼を引き受ける。

赤松隆介

活樹の本当の父親。デビューから9戦連続でKO勝利を上げ、期待の星と言われていた。

活樹の母親である里山佐知子との婚約が決まっており、佐知子はお腹の中に活樹を身ごもっていた。

そんな中、赤松は10戦連続KO勝利を手土産に結婚を両親に申し込むつもりで、八五郎との試合に挑んだ。

しかし、八五郎のカウンターを浴び負けてしまうばかりか、後頭部を強打し、その1ヶ月後に死亡してしまう。

赤松のボクシングスタイルはファイター型で、天才的な才能とずば抜けたパンチ力を持ち、それは活樹にも受け継がれている。

KATSU!の特徴とおすすめポイント

あだち充原作

この作品は、あだち充が原作です。

そのため、「KATSU!」にもあだち充の作品の特徴が存分に発揮されています。

例えば、ラブコメにおいてスポーツを利用し、かわいいヒロインがいて、恋とスポーツの両方にライバルが存在して…

そして、さらに犬を飼っていて、主人公の身近な存在の人が亡くなる(もしくは亡くなっている)といった具合に、この作品にもあだち充作品の「定石」と言われる設定が使われています。

そして、同時にあだち充だからこそ出せる特徴が大いに発揮されているということもこの作品がおすすめできる一つの理由です。

「特徴」を「KATSU!」で例えて

さて、「タッチ」や現在(2019年8月15日)好評連載中の「MIX」をはじめとする、あだち充の作品はどうして愛されているのでしょうか?

それには、あだち充にしか出せない3つの特徴が存在しているからだと私は思っています。

そして、それらは先にあだち充の「特徴」がKATSU!にも存在していると言った通り、この作品にも見られ、この作品のおすすめポイントとも直接的につながっていますので紹介したいと思います。

①伏線の回収

まず一つ目は、伏線の回収が素晴らしいということです。

あだち充の作品には、他の作品を読んだことがある人は知っていると思いますが、実に多くの伏線が組み込まれています。

さらに、そのすごいと思わせるところが、日常の会話の中や、一見重要でなさそうな景色の流れであったりとごく自然に隠されているところです。

今回の「KATSU!」で一つ上げるとすれば、第1巻で八五郎が墓参りから帰ってきたシーンで、

活樹;「おふくろの命日はまだ先だろ?」
八五郎;「あ、まあ。それはそれ、これはこれ、…」

というものがあります。

このシーンは一見なんでもないように描かれています。

しかし、この何気ない会話は、実は重要なものにつながっているのです。

その他にも、赤松が所属していたボクシングジムの会長との会話のシーンなど読み返してみると様々な場面で張り巡らされた伏線を見つけることができます。

これらを、あたかも同じペースに作っているように見せて、そう感じさせられるように作って、実はそうでない。

そういったところに、あだち充の凄さが感じられます。

②設定

二つ目としてあげられるのが、設定の上手さです。

あだち充の作品には、例えば「タッチ」における上杉和也の死であったり、「クロスオーバー」における青葉の死であったりと主人公にとっての人生における最大とも言える困難が発生します。

そして、それが作品の中で良い転換期となります。

今回の「KATSU!」では、香月とお近づきになるためにボクシングを始めたが、実際は香月はボクシングが嫌いであった。

「ボクシングをする男とは、絶対に結婚しない」とまで言い切るほどで、

この設定によって、そんな壁にあたった活樹は、これからどういった風にボクシングで才能を開花させ、さらに香月との関係はどうなっていくのだろうと、作品の主軸であるスポーツと恋愛の両方で、読者は先の展開が気になって行くのです。

これには、あだち充のテンプレという人も大勢いることも確かですが、実はこの設定には2つのテーマにおいて、読者の興味を引き付けさせる素晴らしい仕掛けが存在していたのです。

③終わり方

そして最後にあげる特徴が、連載の終わらし方です。

漫画にとって最も重要と言っても過言ではないもの。それは、その作品の終わり方にあると思います。

私達読者は、主人公やラブコメであればヒロインとの今後など、これから先を想像し、期待してしまうものです。

それは、話題作であればあるほど期待値は上がりますし、それを急いだり、話が短縮されたりすると、「作者が終わらせた」とか「打ち切り漫画だ」と避難を浴びたりしてしまいます。

そのため、終わり方は非常に重要です。

あだち充の作品は、それがどの作品においても、

読者にこれからを想像させ、期待させる。しかし、その先は決して描かず(続編を描いたりすることもなく)読者に想像させます。

そのため、読者の期待を裏切ることなく満足感を与える結果となり、完璧であると言えるでしょう。

「KATSU!」のラストも詳しくは、ネタバレとなってしまうので言えませんが、このラストを言葉にせず、なんとも言えない余韻を是非読んで感じてほしいと思います。

ヒロインのキャラ設定

そして最後は、この作品だけの特徴を紹介したいと思います。

それは、ヒロインの水谷香月のキャラ設定です。

あだち充の作品のヒロインといえば、「タッチ」の浅倉南に代表されるように、あまり外部に敵意をむき出さず、主人公の良き理解者として尽力する。といったキャラクター像が多いです。

しかし、この作品で香月は、活樹に近づく南条理子や半沢みのりといった恋敵には露骨に反応したり、勝ち気で暴力的なことなどあだち充作品ではあまり見られないツンデレな対応を見せてくれます。(もうちょっとデレが多くても良かったかもしれませんが…)

なので、新たな雰囲気が味わえて、良い作品であると思います。

おわりに

どうでしょうか?

「KATSU!」の魅力は伝わっただしょうか?

ボクシングに興味がない人もしっかりと楽しめる作品でありますし、16巻で完結と、あだち充の作品にしては比較的短く簡潔されていて、その分内容もぎっしりと詰まっています。

ぜひ読んだことのない人はこの機会に一度読んでほしい作品であります。